コラム~Column~

不動産仲介のあれこれトピックス

2021年1月15日
緊急事態宣言再び!
2021年の不動産市況を読み解く

2021年1月7日、菅義偉首相が新型コロナウィルス感染拡大を受けて開催された対策本部の会合にて、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が発令されました。
昨年2020年には1回目の緊急事態宣言が発令され、4月7日〜5月25日までの1ヶ月以上にも及ぶ期間で外出自粛を余儀なくされました。不動産業界も多大な影響を受けています。
今回は、前回の緊急事態宣言下で不動産業界が受けた影響を踏まえ、2回目の緊急事態宣言に対して不動産オーナーがどのような心構えでいたらよいのかを解説します。

第1回緊急事態宣言で不動産業界が受けた影響

全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)は2020年4月に「不動産価格と不動産取引に関する調査報告書〜第17回不動産市況DI調査〜」を発表しました。
報告書を見ると、中古・新築の戸建とマンション、居住用賃貸と事業用賃貸で、価格や賃料、取引件数、成約件数などが軒並みマイナスを記録しています。
さらに、首都圏の中古マンション成約件数は、2月と3月はそれぞれ3600件以上だったのに対し、緊急事態宣言のあった4月と5月は1600件程度と、2000件近くも減少しました。外出自粛やテレワークの導入などで商談が止まったことが不動産市況冷え込みの要因と考えられます。

ところが、緊急事態宣言が解除されてしばらく後の10月には大きな変化がまた起きました。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、10月の首都圏の中古マンション成約件数は、前年同月比31.2%増の3636件となったのです。これは過去最高の件数だといいます。
新型コロナウィルスの感染拡大がとどまることを知らないなか、不動産市況は一足先に盛り返したのです。

オンライン化が加速

不動産業界の営業といえば、対面が当たり前でした。業界の長年続いた慣習ともいえますが、これが新型コロナの影響により大きく様変わりしました。オンライン化によるリモート営業が浸透してきたのです。
住宅・不動産ポータルサイトを運営するLIFULLが、2020年3〜5月に不動産会社向けに行なった「ビジネスへのコロナの影響」のアンケートによると、「売上の減少」と回答する会社が最も多かったようです。問い合わせがつながらなかったり、人の移動に制限がかかっていたりしたことが要因でしょう。
ただ、市況の急激な冷え込みを乗り越えて以降は、オンライン化の加速で不動産会社への相談や打ち合わせが容易となったことが、不動産売買の成約件数回復に寄与したのでしょう。

2度目の緊急事態宣言下における不動産オーナーの心構え

新型コロナウィルスの影響は、不動産オーナーにも重くのしかかっています。
2020年6月に新型コロナウィルスによる賃貸管理業への影響を調査したアンケートでは、96.7%の企業が「影響があった」と答えており、なかでも「家賃の減額請求が増えた」が72.4%に上っています。
これに対する具体的な対応策としては43.7%が「家賃の減額請求、滞納対応」と答えており、不動産オーナーの収入源である家賃が回収できない、苦しい状況が見て取れます。
居住用に限らず、事業用不動産を貸し出しているオーナーにも、企業の営業自粛によってテナントからの賃料減免や支払猶予を求められるケースが相次いでいます。
いずれにしても企業が稼働しないことで、居住用の場合は勤務先が休業したり解雇されたりしたせいで家賃が払えず、事業用の場合は賃料支払いにあてる売上が激減して支払いに苦しんでいる実情がうかがえます。

『新型コロナウイルスによる不動産管理業務への影響に関する調査』プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMESより)

賃料減免に応じる必要はない

テナント賃料の減免や家賃の減額請求、滞納対応といった処置を講じているオーナーは多いですが、本来オーナー側に非のある話ではないため、必須ではありません。
テナントが国や自治体からの営業自粛に従ったことが家賃滞納の要因だとしても、厳しい言い方をすればオーナーには関係がないからです。
しかし、賃料や家賃の減額措置に応じなければ、入居者は退去することになり、結局は賃料収入が途切れてしまう可能性があります。

なお、本来、家賃の減額は、その減額に合理的な基準がなければ、減額した金額は入居者に対する寄付金・贈与金扱いとなります。税務上は、減額分を損金扱いにできないのです。
ただ、賃料の支払いが困難になった理由が新型コロナウィルスの影響であった場合、一定の条件を満たすことで、税務上損金として計上が可能になります。
一定の条件とは、以下の通りです。

①入居者等が新型コロナウィルスの影響で収入が減少し、事業継続が困難になったこと、または困難になる恐れがあること。

②賃料の減額が入居者の事業継続支援や、入居者がサラリーマンなどである場合は雇用保険を目的としたものであること。

③賃料の減額が新型コロナウィルスの影響の期間内に行われていること。

『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いについて』国税庁HPより)

加えて、対象は売上が大幅に減少した中小企業経営者や個人事業主のみですが、「特別家賃支援給付金」の活用により、家賃額の3分の2までの給付金を受けることができます(上限あり)。「持続化給付金」(法人200万円、個人100万円)との併用も可能です。
賃料の減免等に応じるかどうかは、最終的にはオーナー自身の判断となるので、減免する場合は期間を区切るなど、少なくとも自分の首を絞める形にならないように注意してください。

『持続化給付金に関するお知らせ』経済産業省HPより)

「納税を猶予する『特例制度』」財務省HPより)

不動産オーナーは自分だけで
悩まず国や地方自治体の制度を利用しよう

上記で解説した各種補助金の制度は2020年12月末までの対象、2021年1月中旬までの申請期限となっている制度がほとんどであり、本記事執筆時点で国や自治体の新たな給付金制度は特に発表がありません。
今回は新たに2021年1月8日〜2月7日まで、東京、神奈川、千葉、埼玉を対象に緊急事態宣言が発令されています。新型コロナの影響による自粛ムードは、相変わらず予断を許さない状況です。 今後、政府がどのような救済措置を講じるかは現時点では何とも言えませんが、今回解説したような賃料減免・減額の対応が必要になった際には、国や地方自治体で活用できる制度がないか、自分の身を守るために下調べするよう心がけましょう。